BOOK FILE 2-2:Bentley MkVI

BOOK FILE 2-2:Bentley MkVI

By SAWAMURAMAKOTO

戦後ベントレーの開祖を知る

こちらは、戦後ベントレーの開祖マークVIと、それにまつわるモデルたちを徹底的に解説した本。 ベントレーの世界は堀り下げるほどに深い。

text:Hiromi TAKEDA 武田公実

 今回、当コーナーで紹介する一方の本「The Complete Bentley」が、ベントレー90年の歴史を満遍なく記した年代記であるのに対して、こちらは非常にマニアックな1冊。戦後ベントレーの開祖“マークVI”に徹頭徹尾こだわり、これでもかとばかりの念入りさで解説されているのだ。
 ロールス・ロイス社が第二次世界大戦後に初めて製作した完全ニューモデルとして、1946年春にデビューを果たしたベントレー・マークVIは、R-R/ベントレーとしては史上初めて、全鋼製の標準ボディを与えられたサルーンである。戦前のダービー・ベントレーと比べれば、遥かに身近な存在になったマークVIは、ビジネス的にも大きな成功を収めた。しかしその一方で、ベントレーの旧き良き伝統に従った、ビスポークのコーチビルドボディ車も夥しい種類が製作され、21世紀の現代においてもファンに愛好されているモデルなのだ。
 この本ではベントレー・マークVIとそのビッグ・マイナーチェンジ版である“Rタイプ”、そしてベントレー史上に燦然と輝く金字塔“Rタイプ・コンチネンタル”。さらには、マークVI/Rタイプの後継車に当たる“Sタイプ”やR-Rブランドで製作されたマークVIの姉妹車“シルバー・ドーン”に至るまでカバーし、戦後のベントレーが最高の輝きを放っていた時期の各モデルの実像と魅力を浮き彫りにしている。その内容は多岐にわたり、ヒストリーはもちろん各世代の標準モデルやビスポークボディ車に特装モデルの紹介、そしてバイヤーズ&レストアガイドなど、恐るべきこだわりが随所に垣間見られる内容となっているのだ。
 著者のマーティン・ナットランド氏は、モータージャーナリストとして40年以上のキャリアを持ち、またベントレーの熱心な愛好家にして、ベントレーに関する最も権威の高いクラブ“ベントレー・ドライバーズクラブ”会報誌の編集長も長らく勤めていた人物である。それだけに、本書に注いだパワーは、単なる歴史家の域を超えたものとなっているのだろう。ベントレーというブランドの深さをまざまざと見せ付けられる1冊となっている。


Bentley MkVI
Martyn Nutland著
VEROCE BOOKS社刊
176ページ/英語

※「フライングB No.002」(2009年刊)に掲載された記事に加筆修正しました。 掲載された情報は、刊行当時のものです。