An Introduction to Vintage Bentleys
BOOK FILE 1-1 : BENTLEY FACTORY CARS 1919-31
ヴィンテージ・ベントレー入門
そのカリスマ性に対して文献の少ないことで知られるW.O.時代のベントレー。 そんな中でも、これは決定版と言える1冊である。
text:Hiromi TAKEDA 武田公実
ベントレー社の創始者にして、初代主任設計者であるW.O.ベントレー。彼が会社を興した1919年から、ロールス・ロイス社に買収されてしまう'31年までに生産されたベントレー車たちは、その生みの親の名を取って“W.O.ベントレー”。あるいは、本社工場が置かれた土地の名前から“クリクルウッド・ベントレー”と呼ばれているのはご存知のとおり。
この時代のベントレーは、ヴィンテージ期の英国車を代表する、重量級スポーツカーとしての魅力の高さもさることながら、ル・マン24時間レースをはじめとするビッグイベントで輝かしい成績を収めている。そのことからも、現役時代はもちろん現代においても、まさに“カリスマ”と呼ぶに相応しいステータスを誇り、世界中のエンスージァストを魅了しているのだ。
ところが、ひとたび本の世界に目を転じてみると、W.O.時代のベントレーをフィーチャーした文献が、あまりにも少ないことに気付かされる。特に日本語で書かれた専門書は、事実上皆無と言っても過言ではない状態。その祖国であるイギリスでも、その人気に比例しただけの種類は望めないのだ。
しかし、今回紹介する本は、そんな状況のもとでも決定版と言われている1冊。タイトルが示すとおり、対象を1919-1931年に生産されたベントレー、つまりW.O.が自ら製作していたクリクルウッド・ベントレーのみに絞って解説した本である。その発刊は1993年と、決して新しくはないのだが、今なおW.O.ベントレーの愛好家ならば必ずと言って良いほど書庫に納めているという、いわゆる“決定版”的な専門書なのである。
著者であるマイケル・ヘイは、この本の他にも「Bentley:The Vintage Years」や「Autofolio on the supercharged 4 1/2Litres」などの専門書を書いているのに加え、“ベントレー・ドライバーズ・クラブ(B.D.C.)”の機関紙にも寄稿する、有名なヴィンテージ・ベントレー・スペシャリスト。今回からスタートした本誌「Flying B」を読むことで、ダンディズムの横溢する“ベントレー・ワールド”に興味を持たれた読者には、是非ともチャレンジして欲しい1冊なのだ。
BENTLEY FACTORY CARS 1919-31
Michael Hay著
OSPLEY AUTOMOTIVE社刊
352ページ/英語
※「フライングB No.001」(2008年刊)に掲載された記事に加筆修正しました。 掲載された情報は、刊行当時のものです。