BOOKFILE 06-2 : Bentley Since 1965

BOOKFILE 06-2 : Bentley Since 1965

By SAWAMURAMAKOTO

近代ベントレーの歩み

1965年に登場したTシリーズを契機に、技術的近代化が図られたというベントレー。 その近現代史を克明に記されている。

text:Hiromi TAKEDA 武田公実

 1965年、それまでのSタイプ(S3)の後継車として誕生したベントレーTシリーズでは、パワーユニットこそS2以来のV型8気筒OHV・6230ccエンジンが踏襲されたものの、シャシーはベントレー史上初のボディ一体型モノコックとされた。また、これまでリーフリジッドだったリアのサスペンションはシトロエン特許のハイドロニューマティックを採用した自動車高調節つきの独立懸架へ。ブレーキも旧来のイスパノ・スイザ式メカニカルサーボつき4輪ドラムから、一挙にハイドロニューマティックによる油圧作動4輪ディスクとされるなど、保守派だったそれまでのR-R/ベントレーの伝統を覆す前衛的テクノロジーが満載されていたのである。
 本書では、Tタイプの登場した1965年を近代ベントレーの夜明けと見なし、それ以降のベントレー近代史を簡潔かつ丁寧に綴った1冊。ベントレーの技術的革新の歴史や、現在の大成功に至る道のりを各モデルの詳細なスペックデータと歴史的背景を合わせて紹介した写真資料集とされている。
 転機となったTシリーズ・スタンダードサルーンはもちろんのこと、ごく短期間のみR-Rと同じ"コーニッシュ"のネーミングが与えられたこともあるコンチネンタル。形式番号からファンの間では"SZシリーズ"と呼ばれるミュルザンヌ/エイト/ターボR。近代初のベントレー専売モデルとなったコンチネンタルR /コンチネンタルT/初代アズール。まだ記憶に新しいアルナージ系。現在のベントレーの隆盛を決定づけた傑作コンチネンタルGTシリーズ、そして現行のミュルザンヌ・サルーンに至る歴代ベントレーの系譜を写真とともに解説。さらに今世紀に入ったのちのル・マン復帰と優勝にくわえて、マリナーによる特別仕様モデルも紹介。現代ベントレーの"文武両道"を示す2つの顔についてまでも、克明に語られているのだ。ベントレーの近代史と今を知るには、まさに絶好の1冊と言えるだろう。


Bentley Since 1965
James Taylor著
CROWOOD社刊
192ページ/英語


※「フライングB No.006」(2012年刊)に掲載された記事に加筆修正しました。 掲載された情報は、刊行当時のものです。